茅ちゃん日記

世の中のこと、思うことをつづります

朝日新聞で(原発利権 裏金システム)を読む

『政・財・官の癒着』当事者からの証言で明らかに・・スクープで済むの?

中部電、政界へ裏金2.5億円 85~04年、取引先から工面 元役員が証言

2014年7月20日05時58分

  中部電力(本店・名古屋市)の元役員が、取引先の建設会社などに工面させた資金を長年簿外で管理して政界対策に充ててきたと朝日新聞に証言した。元役員は政界工作を長年担当し、2004年までの約20年間に少なくとも計2億5千万円を政界対策のために受け取り、多くを知事や国会議員ら政治家側に渡したという。建設会社側への見返りとして「原発関連工事などの発注額に上乗せした」とも証言しており、政界対策資金が利用者が支払う電気料金で賄われた可能性がある。▼39面=法に抵触、認識

 ■原発工事、発注上乗せも
 
元役員の証言によれば大手建設会社2社と名古屋市の電子部品製造会社から1985年には資金提供が始まり、建設会社2社からは95年まで、電子部品製造会社からは04年まで続いた。この間は毎年、建設会社2社から計1千万~1500万円、電子部品製造会社からは100万~200万円を受領。これら3社と別に大手建設会社から93年に2回、それぞれ1億円と4千万円を受け取ったという

 建設会社などが工面した資金は元役員が自ら受け取り、会計帳簿類に記載しないで出納管理した。中部電管内の知事選の際に知事や選対幹部らに手渡したほか、三重県内で計画され、00年に撤回された芦浜原発の立地対策にも数百万円程度を使った。原発政策や電力事業を円滑に進めるためだったという。

 元役員は建設会社への見返りとして、工事の発注を統括する中部電資材部の幹部に依頼し、浜岡原発5号機の関連工事などを利用して「発注額に上乗せしたり、工事に参入させたりして返した」と証言した。

 中部電に資金協力した建設会社3社と電子部品製造会社のうち、建設会社1社の元名古屋支店幹部は「70年ごろから資金を提供した」と大筋で事実関係を認めた。他社の関係者は「話すことはできない」「分からない」などと答えた。

 (砂押博雄、板橋洋佳)

     ◇

 中部電力広報部は取材に「そのような事実は承知していない」と回答。建設会社3社は「そのような事実は把握していない」「事実を確認できないのでコメントは差し控える」とした。

 ■電気料金に転嫁
 《解説》政界対策資金を建設会社に恒常的に工面させる中部電力の裏金システムが明らかになった。電力会社は、原発工事費など電気をつくり届けるのにかかった費用を全て電気料金に上乗せできる「総括原価方式」だ。工面させた裏金分も工事費に潜り込ませて建設会社に支払い、埋め合わせできる。電気利用者は知らないうちに裏金分も負担していたことになる。

 東京電力原発の地元対策で建設会社に裏金を肩代わりさせたことが朝日新聞報道で発覚しているが、中部電元役員の証言この手口が他の電力会社にもあったことを示している。福島第一原発事故後に高コスト体質を生む総括原価方式の問題点が指摘され始めたが、3年以上たっても有効な改善策はできていない。不正の温床になりうる仕組みは今も残存している。

 中部電元役員は原発事故に直面して裏金システムを打ち明ける決意をしたという。不透明な慣行を許してきた地域独占や総括原価方式の仕組みを抜本的に改めなければ、電力会社の信頼回復への道筋は見えないままだ。
市田隆)

 

 

中部電、4県の知事候補に裏金 愛知前知事認める
2014年7月21日16時30分

  中部電力(本店・名古屋市)の元役員が4県の知事選候補側に対し、建設会社に工面させた裏金から計約3千万円を自ら手渡したと朝日新聞に証言した。このうち愛知県の神田真秋前知事(62)が取材に授受の一部を認めた。▼38面=「便宜図っていない」

 元役員は中部電で政界工作を長年担当し、2004年までの約20年間に少なくとも2億5千万円を取引先の建設会社などに工面させて簿外で管理し、政界対策に充てたと証言。見返りに原発工事などの発注額に上乗せしたと証言しており、電気料金で政界対策資金が賄われた可能性がある。

 この裏金の中から、神田氏が初当選した1999年と再選した2003年の知事選告示前、いずれも面会の予約をして愛知県内の神田氏宅を訪問し、現金300万円と500万円を本人に直接手渡したと証言。03年の500万円は大手建設会社5社に100万円ずつ工面させ、建設会社名も神田氏に伝えた。領収書は受け取っていないという。

 神田氏は当時、地元有識者から電力事業のあり方を聞く「中電懇話会」のメンバー。元役員は「懇話会メンバーでもある愛知県知事は他県の知事に比べ重要だった」と説明した。

 神田氏は取材に「金額は記憶にないが、1回は受け取ったと思う。99年という印象がある。03年の記憶ははっきりしない」と授受の一部を認めた上、「電力事業に関する依頼はなかった」と強調した。

 元役員は神田氏を含め80~00年代に中部電管内のうち4県であった知事選で候補者の親族、選対幹部らに1回200万~500万円を手渡したと証言総額は約3千万円で、相手側から要請されたこともあったという。元役員は「知事にそっぽを向かれたら電力事業が立ちゆかない」と話す。

 中部電広報部は取材に「承知していない」と回答。神田氏を除く知事選候補や選対幹部らは「知らない」「記憶にない」と答えた。(砂押博雄、板橋洋佳)
 

 

 

 

 原発利権を追う)裏金システム

知事選は建設会社、便利な裏金だった

2014年7月20日09時01分

 中部電力(本店・名古屋市)で政界対策を担う秘書部の幹部を長く務めた元役員は取材に対し、当事者しか知り得ないウラの活動の詳細を淡々と語った。

 「私がやってきたことは社内でも一握りしか知らない」

 記者が元役員に初めて接触したのは昨年12月末だった。今年6月末まで取材は15回、30時間を超えた。毎回、取材を終えて元役員の発言について調べると、10年以上前に会った人物を含めて氏名の表記や読みはいつも正確だった。会った場所や当時の様子も詳細で、相手の人柄や趣味も事細かに記憶していた。「元役員は社内では頭の切れる緻密な人物という評判だった」(中部電元幹部)という。

 秘書部の業務はベールに包まれている。社長や会長の財界活動の補佐や幹部人事の策定に関わり、政治家との窓口も務めた。「秘書部は政界対策を担い、社内で隠然たる力があった」(中部電元首脳)という。

 元役員が最初に記者に打ち明けたのは、社の交際費から合法的に支出した「オモテの金」の使い道だった。

 電力各社は1974年に自民党への企業献金廃止を決めたが、自民党政治資金団体国民政治協会」への献金は幹部社員による個人献金で続いた。中部電は「個人の判断で、会社としては関知していない」と説明してきたが、元役員はそれがごまかしであることをはっきり認めた。

 「肩書ごとに決められた定額を、会社が給料から引き落とすなどして徴収し献金させていた。そこに個人の意思はなかった」

 政治資金収支報告書に残らない形で自民党有力議員のパーティー券を購入したこともあったという。

 「グループ企業だけでなく、大手建設会社にも協力を仰いだ」

 企業献金廃止の業界ルールを完全に破っていたことも明らかにした。

 「首相や首相経験者、東海地方国会議員側に夏と年末の2回、100万~300万円を議員会館や個人事務所に持参した」

 一方、政界対策費を建設会社に工面させる「ウラの金」の存在を記者が聴き出すのには時間がかかった。

 詳細を尋ねても言いよどむことが続き、雑談だけで終わる取材もあった。核心を口にしはじめたのは、8回目の3月末のことだ。

 「県知事選で配る金は建設会社に作ってもらった。中部電として使う金を建設会社に用意してもらったということ。便利な金だった」

 建設会社が工面した金は会計帳簿に記さず、税務申告もしなかったという。領収書が不要で存在するはずのない金は足がつかず、使い勝手が良かった。

 「裏金を管理することは税法に触れるとわかっていた」

 この日から裏金の使い道を元役員に繰り返し尋ねるとともに、当時の関係者への裏付け取材を並行して進めた。4月末には、裏金を工面し続けた建設会社の元幹部が「中部電から協力を依頼されるのは信頼の証しだった。断る理由はなかった」と認めた。

 知事選の告示前に「自由にお使いいただけるものでご支援したい」と電話を入れ、数百万円の裏金が入った紙袋を自ら渡す。授受場所は知事宅やホテルのロビーなど。やりとりは5分程度。礼を言われると、すぐに辞去する――。証言内容は常に詳細だった。

 「選挙はいろいろと金がかかる。自由に使えるカネは喜ばれた。国会議員と違い、知事は資金集めに困っている人が多かった」

 記者は元役員に実名証言を依頼してきたが、証言が「ウラの金」に及び、「実名だけはさすがに勘弁してほしい」と固辞された。元役員は個人的な感情はほとんどはさまず、事実関係を淡々と語り続けた。自らが関与した不正を明かした理由について「言葉にするのは難しい」と言い、顔をしかめて続けた。

 「裏金を扱う仕事はブラックボックス。とても嫌だった。でも、電力会社が裏金を使わずに済む時代が来るとは思えない」

 元役員が証言した裏金問題は、刑事事件としての時効が成立している。(砂押博雄、板橋洋佳)

     ◇

 〈中部電力〉 1951年設立、資本金約4307億円。愛知、岐阜、三重、長野の4県と静岡県の中西部に電力を供給する。電力10社のうち売上高は3番目。同社唯一の浜岡原発は76年に運転を始めた。

 

 

 原発利権を追う)裏金システム

県知事、何かと世話になる/裏金の額、発電所数も考慮

2014年7月21日05時00分

 中部電力が建設会社に工面させた裏金を使って知事対策をしてきた狙いについて、中部電元役員は「県のトップには何かと世話になる」と説明した。電力事業を地域で独占してきた電力会社と、地方政界に君臨する知事との密接な関係を物語る証言だ。▼1面参照

 

 原発の建設や運転、廃止の手続きを定めた原子炉等規制法上、知事は法的権限を持っていない。だが、県を含め原発の立地自治体は電力各社と安全協定を結んでおり、地元の同意がなければ施設の新設や再稼働は進まないのが現実だ。

 元役員は地元の反発をかわすことを「たがを外す」と例えた。「電力会社事業をつつがなく行うため地元の束縛というたがを外したいと思っている。知事ら地元ともめると大変な状況になる」

 新潟県にある東京電力柏崎刈羽原発は典型例だ。早期の再稼働の方針を盛り込んだ東電事業計画に泉田裕彦知事が強く反発。再稼働を容認しない姿勢を示し膠着状態が続いている。

 中部電も約25年前、管内の石油火力発電所事業計画変更で地元知事から強く反対され、計画撤回を余儀なくされた。中部電が知事選で裏金を支出したのはこうした状況を避ける狙いがあったとみられる。

 「愛知は中部電のホームグラウンド。管内(愛知、岐阜、三重、静岡、長野)の他の知事選も重要だ」

 元役員によると、中部電本店9階の秘書部では知事選が近づくとそんな会話がかわされた。知事選候補側への裏金支出額は発電所数などを考慮して算定。1980~2000年代に中部電管内のうち4県であった知事選で1回あたり200万~500万円を支出したという。元役員は「具体的に何かを依頼する言葉は一切言わなかった。そのほうが相手も受け取りやすいし、『中部電に世話になった』と思ってもらう程度で良かった」と言う。

 知事は原発建設などの際に埋め立ての許認可権を持ち、環境への影響を調査・予測する環境アセスメントの評価も下す。元役員は「知事には用地造成と環境アセスメントの権限がある」とも話した。(阿久津篤史)

 

 ■神田前知事「便宜図っていない。頼まれたこともない」 

 朝日新聞が6月3日、愛知県神田真秋前知事に同県内の自宅で取材した主なやりとりは以下の通り。

 ――中部電力元役員が1999年と2003年の知事選前、それぞれ300万円と500万円を渡したと証言している。

 いろんな方から選挙資金をいただく。どこからどれだけもらったかはスタッフが処理した。私は定かではない。

 ――神田氏の自宅で直接本人に手渡したと証言している。

 1回は受け取ったと思う。1回目の選挙の時だった印象がある。2回目の選挙の時にもらった記憶ははっきりしない。中部電に便宜を図っていないし、何かを頼まれたこともない。

 ――2回目の500万円は建設会社から集めた金で会社名も伝えたと言っている。

 受け取ったと言える自信がない。中部電は中部経済連合会の会長企業だから、中経連の支援か中部電かは峻別(しゅんべつ)していない。

 ――現金の使途は?

 事務所の土地を借りるなどいろいろ。中部電と癒着があると思われるのは嫌だし、そういう認識はない。

    ◇

 中部電元役員が現金を渡したと証言した神田氏以外の知事候補は取材に「知らない」と述べた。ただ、受け取り役とされた知事候補の親族には「覚えていないが、元役員が渡したと言うならそうなのだろう」と答えた人もいた。この親族は「政治資金収支報告書などに記載しないですむ裏金は票集めの飲食代や関係者への謝礼など選挙には欠かせなかった」と語った。受け取り役とされた他候補の選対幹部は「記憶にない」と繰り返しつつ、「(中部電が)そういう話を外に出すのは不見識だ」といら立つ場面もあった。

 (砂押博雄、板橋洋佳)

 雑感:う~ん「原発ホワイトアウト」を読んだとき、身震いしたが・・・現実の闇は深い。これって犯罪だろう?時効で済まされるのか?

 

 

 

 原発利権を追う 裏金システム)政界対策、極秘の「遺書」

2014年7月22日05時00分

 

 中部電力社長だった松永亀三郎氏はバンカーショット直前にゴルフコースを飛び出し、名古屋市内の病院へ急行した。政界工作を担ってきた50代役員がくも膜下出血で倒れ、帰らぬ人となったのだ。1988年のことである。

 50代役員は電力マン人生の大半を中部電秘書部で過ごした。政官財の有力者と独自の人脈を築き、次代の社長を嘱望されていた。

 直属の部下だった秘書部幹部は松永社長より早く病室に着いた。あまりに早すぎる死に、悲しみと戸惑いが交錯した。

 「ノウハウを何も引き継いでいない……」

 ぼうぜんとたたずんでいると、役員の親族が1枚のメモを差し出した。救急車で運ばれる間、50代役員が必死に書き取らせたのだという。そこには二つの建設会社の名前があった。政界対策資金に困った時、頼るべき2社と記されていた。

 乱れた文字でつづられたメモはその後、50代役員の「遺書」として秘書部のごく一部に極秘に引き継がれていく。2011年の福島原発事故から3年たった今年、建設会社に工面させて簿外で管理した裏金を政界対策に充ててきたと朝日新聞に証言した中部電元役員も、そのノウハウを受け継いでいた。

 (砂押博雄)

 

原発利権を追う 裏金システム)

本店9階、書庫で現金管理 業者、長く深く中部電接近

2014年7月22日05時00分

 (1面から続く)

 

 中部電力で政界工作を担った50代役員が1988年に急死してしばらくたった後、その「遺書」に記されていた建設会社の幹部が紙袋を抱えて名古屋市内の中部電本店を訪ねてきた。

 「自由にお使いください」

 中部電元役員の証言によると、「遺書」にあった建設会社2社はその後も95年ごろまで毎年1千万~1500万円の現金を工面し、名古屋支店幹部らが中部電本店9階の秘書部に持参したという。中部電は裏金を工面した建設会社には原発工事などの発注額に上乗せして埋め合わせをした。工事費の原資は電気料金だ。

 現金受け取りの場面を元役員はこう回想した。

 「紙袋の中には厚紙でできた箱が入っていた。箱を開けると、左右に開く形になる。その両側にはハトロン紙に包まれた帯封つきの数十万円ずつの札束が、びっしりと入っていた」

 「現金を受け取ると、秘書部の部屋と同じ本店9階にある書庫に向かう。そこにはキャビネットが置かれていて、そこに現金を入れて保管した。裏金が必要になると書庫へ行き、キャビネットから百万単位の現金を取り出して使った」

 秘書部に現金入りの紙袋を運んだ建設会社元幹部も「遺書」を目にしたことがある。そこには社名しか書かれていなかったが、暗に自分を指していると直感したという。

 建設会社元幹部が、急死した中部電の50代役員と出会ったのは今から33年前だった。親交のあった中川一郎科学技術庁長官から地元・北海道出身の力士の名古屋後援会設立を依頼され、中部電常務だった松永亀三郎氏に相談したところ、「頼りになる」と50代役員を紹介されたという。以来、ふたりの交流は深まっていく。

 親交を強くしたのが名古屋経済界の「長く勤務しないと信用されない」(元幹部)という慣習だ。

 その象徴はかつて存在した会員制の「名古屋帰化の会」。名古屋に10年以上連続勤務していることが入会条件とされ、建設会社の多くが在籍し、中部電の政界担当も名を連ねた。在籍年数の長い社員を中部電担当として育て、浜岡原発静岡県)などの工事受注をめざす建設会社もあったという。

 建設会社元幹部は公私にわたって中部電に食い込んでいった。中部電社長の外遊に同行したり、新鮮な魚を部下に社長宅に届けさせてその場でさばかせたりした。浜岡原発反対派だった漁協幹部の娘と自分の部下の結婚もとりもった。中部電の有力幹部には盆暮れの付け届けを欠かさず、休日には自宅を訪ねて家族とも親しく付き合ったという。

 中部電の50代役員が急死した時、親族が助けを求めたのはこの建設会社元幹部だった。救急搬送先が見つからず、建設会社元幹部がよく知る病院に掛け合って受け入れてもらった。

 一命をとりとめることはできなかった。しかし、その信用は「遺書」に書き留められた。建設会社元幹部はその後も裏金を工面しつづけ、濃密な交際を重ねていく。(板橋洋佳)

 

 

 (原発利権を追う 裏金システム)2人の議員側に1億4000万円

2014年7月23日05時00分

 

 政界対策資金として建設会社などに少なくとも2億5千万円を工面させ、簿外で管理してきたと朝日新聞に証言した中部電力元役員は、このうち計1億4千万円を2人の国会議員側に配ったことを明らかにした。中部電の裏金システムは地方政界にとどまらず、中央政界にも及んでいた。

 元役員は自民党有力議員が東京都内で開く勉強会や朝食会に足しげく通い、親交を深めた。国会議員約20人が名古屋市を拠点とした後援会をつくるのにかかわり、中部電の発注工事に後援業者を参入させてほしいと頼まれたら発注先の大手建設会社に口利きした。首相経験者から依頼され、学生を中部電に入社させたこともあったという。元役員は「政治家を押さえれば霞が関にも影響力を行使できる」と語った。

 元役員の証言によると、自民党が下野して政界再編が起きた1993年、中部電の管轄外を地盤とする国会議員(故人)が中部電幹部を通じ、新党結成資金として1億円の提供を求めてきた。手持ち資金では足りず、新たに大手建設会社に工面させたという。

 「大きな紙袋二つに入れた1億円を新幹線で運び、都内にあった国会議員の事務所で秘書に手渡した。会社への謝礼として1%分の商品券を受け取った」

 別の国会議員(故人)からも同年、中部電管内の県知事選候補の選挙資金に用立てる名目で4千万円を頼まれた。この時も大手建設会社に工面させ、議員の地元事務所にいた秘書に現金4千万円を届けたという。

 元役員が名指しした秘書2人は取材に対し、現金授受を否定した。元役員は「自分が現金を運んだ。議員が言った名目通りに使われたかはわからない。あえて確かめない。議員の要求に応えたことに意味がある」と話した。

 裏金の支出先は政界対策にとどまらない。元役員は「90年代に芦浜(あしはま)原発の地元対策の名目で1回あたり200万~300万円を支出した」とも証言した。中部電立地部幹部に頼まれ、裏金を手渡したという。裏金を工面しつづけた建設会社の元幹部も取材に「77年ごろに立地部から依頼され、500万円を芦浜の現地事務所に届けた」と述べた。

 中部電は三重県南部の芦浜地区で63年から芦浜原発の立地を目指したが、2000年に断念。今も350万平方メートルの用地を保有したままだ。

 今年5月、現地を取材すると、中部電社員らは70~90年代に地元漁協の反対派の切り崩し工作、賛成派のつなぎ留め工作を盛んに行ったという。94年には中部電から計15億円の漁業補償金が支払われ、元町議、元漁協幹部らは「中部電に飲食費をつけ回すことも日常的だった」と振り返った。中部電の現地事務所に渡った裏金がどこに渡ったかは確認できなかった。元役員は「原発の立地対策はブラックボックスだから」とつぶやいた。

 中部電が建設会社に工面させ、簿外で管理してきた裏金は使い道が追い切れないほど様々な場面で投入された。元役員は「裏金を使わなくてすむ時代は来ないと思う」と語った。近年の中部電役員や秘書部幹部らに取材を申し込んだが、答えは「神経質な内容なので取材に協力できない」だった。(砂押博雄、阿久津篤史、板橋洋佳)

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 「原発利権を追う」の取材を続けます。特別報道部のメール(tokuhoubu@asahi.com)に情報をお寄せ下さい。