日刊ゲンダイより 「南シナ海でも関与強化 トランプと歩む軍拡その先の地獄絵」
南シナ海でも関与強化 トランプと歩む軍拡その先の地獄絵
狂犬国防長官のリップサービスに、日本のメディアは大ハシャギだ。
マティス米国防長官がトランプ政権の閣僚として初来日。稲田防衛相との共同会見で、在日米軍駐留経費について「他の国々が見習うべきお手本」と評価した。
この発言に政府関係者はホッとひと息。選挙中からトランプ大統領は、駐留経費を全額負担しなければ在日米軍の撤退もあり得ると示唆。“マッドドッグ”がどんな要求を突き付けてくるのかとビビりまくりで、安倍首相が官邸にマティスを招き、約1時間に及んだ“おもてなし”も不安の表れ。
それを払拭するような狂犬の「お手本」発言に、政府関係者は浮かれっぱなし。翌日の主要紙には「ここまで評価するとは驚いた」などと防衛省関係者の匿名コメントがあふれ、さも“大手柄”のように報じていたが、「ちょっと待て」だ。
もともと日本の駐留米軍経費の負担率は74・5%と他国と比べてズバぬけて高く、その金額は約7600億円に達する。ベラボーな負担をちょっとでも削れたのならいざ知らず、「高止まりの現状維持」で舞い上がるとは、安倍政権は奴隷根性丸出し。そんな政府内の安堵の息が伝わってくるような大新聞の紙面を眺めると、政権とメディアの一体化を、つくづく思い知らされる。
■いきなり「血の同盟」を口走る勇み足
むしろ、今回の日米防衛相会談の本質を物語るのは、共同会見で稲田が発した次の言葉だ。
「(日米)同盟におけるその分担というのは、何も金銭的なものに限るわけではない」
大メディアの多くは、このコメントをスルーしたが、カネに限らないなら今後はヒトも命も米国に差し出すという意味だ。稲田はマティスとの会談で「同盟における我が国の役割を強化する」と明言し、中国の南シナ海進出への対応でも「関与の強化」で一致した。5日付の東京新聞によると、会談後、防衛省幹部は南シナ海で日米共同訓練を行う可能性も指摘したという。日本はひたすら軍拡路線を歩み、いつでも米国と一緒に国民は血を流す覚悟がある――。稲田の発言はそんな“血の同盟”宣言に等しい。マティスの「日本はお手本」のリップサービスは、この勇ましい宣言の直後に飛び出した。ある意味、分かりやすい構図である。
今回の安倍政権の対応について、防衛省出身で官房副長官補だった柳沢協二氏に聞いてみた。
「トランプ政権に“今後も見捨てない”と認めてもらうため、日本側から同盟の役割拡大を過剰に買って出た感じです。マティス長官から言質を取った『尖閣諸島は日米安保の適用範囲』や『中国の海洋進出への懸念』などは、冷静に考えればオバマ政権時代から何ひとつ変わらない。日本側は現状維持の“代償”として、発足間もないトランプ政権に、安保法制による米軍との一体化など“軍拡カード”をいきなり切ったわけです。それだけ新政権に翻弄されたとも言えますが、日米間の“血の同盟”は安倍政権にとっての既定路線。米国の軍事戦略に進んで巻き込まれているようにも思えるのです」
安倍は04年の著著「この国を守る決意」で〈軍事同盟は血の同盟〉と表現。アメリカが攻撃されているときに自衛隊は血を流さない、日本の青年も血を流さなければイコールパートナーと言えないとの旨を書いていた。
それから13年。この国は「あれよあれよ」で、安倍の思い描いた戦争国家に転換している。
脅威を煽って軍拡迫る倒錯国防論のおぞましさ
安倍政権下での平和国家から軍事国家への転換を象徴するのが、軍事研究の促進方針である。
先日も、大学や民間研究機関における軍事転用可能な技術開発推進のための検討会を内閣府に発足させると報じられた。検討結果は安倍が議長を務める「総合科学技術・イノベーション会議」に反映され、国の科学技術予算の配分にも大きな影響を及ぼすという。
つまるところ、大学への助成金などを人質に取り、「軍事研究に熱を入れろ」とケツを叩こうとしているわけだ。
日本の科学技術政策は平和憲法下で、軍事研究とは一線を画してきた。科学者の代表機関「日本学術会議」も1950年と67年の2度にわたって戦争と軍事目的の研究を否定する声明を決議。声明には、科学者が戦争協力し、戦争を残虐化させた反省の意味が込められているが、そんな崇高な理念は問答無用。軍需産業を中心に民間企業と政府、研究機関の技術開発を強固に連携させ、大学を巻き込んで米国型の「軍産複合体」を目指す。それこそが戦争屋・安倍たちの薄汚い魂胆である。政治学者の五十嵐仁氏はこう言った。
「安倍政権は武器輸出の解禁に加え、防衛省内には軍事転用可能な大学などの研究への助成金制度まで創設。その額は今年度の6億円から2017年度予算案では110億円と一気に18倍増です。政策が小出しで、国民は気付きにくいかもしれませんが、この政権は明らかに“戦争で儲ける国づくり”を進めています。中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威を煽るのも、そのため。答えは1つ、軍拡路線の必要性を説くのに都合が良いからで、さらなる防衛力拡大を求めるトランプ政権の“外圧”すら利用する胸算用でしょう。本来、武力の伴う紛争解決をいさめる“平和国家”としての使命感なんて、微塵も感じさせません」
■不毛な挑発合戦は危うい軍事協力への近道
防衛費が“平和のバロメーター”ならば、年々減っていくのが理想のはず。それだけ他国による脅威が取り除かれている証拠で、5年連続で増額し、17年度予算案で過去最大5.1兆円を計上する安倍政権は論外だ。外交努力を怠ったツケともいえ、納税者の国民に詫びるのがスジだろう。
ましてや安倍や稲田のように、米国の国防トップを喜ばせるために「防衛費は毎年伸ばしている」と胸を張り、今後も自主的に増額を買って出る理屈が、いかに倒錯していることか。安倍たちの本末転倒な「倒錯国防論」のバカらしさに、国民もそろそろ気付いた方がいい。
さらに恐ろしいことには、安倍政権が盲目的な軍事貢献を約束したパートナー、トランプ政権の挑発外交が早くも過熱している。日本のメディアは一行も報じないが、稲田との共同会見でマティスは海外メディアの質問にヒートアップ。弾道ミサイル実験に対し経済制裁を加えたばかりのイランを「世界最大のテロ支援国家」と罵倒し、返す刀で「レバノンやシリア、バーレーン、イエメンなどに関しても、見過ごせない不正行為がある」と中東諸国をメッタ切り。いやはや聞きしに勝る狂犬ぶりだった。
「トランプ政権は中国への挑発も日に日にエスカレートさせていますが、互いに挑発を強めるだけの不毛な争いを続ける限り、絶対に和解には至りません。中国と北朝鮮の脅威や中東情勢の混乱に対し、マティス長官は『軍事作戦は必要ない』と表明しましたが、『現時点では』の注釈つき。将来の作戦を否定していません。すでに日米同盟の役割拡大というカードを切った手前、安倍政権がトランプ政権の危うい軍事協力を求められた際、断れる余地は残されているのか。安倍政権の“血の同盟”は口先だけの印象で、覚悟もリアリティーも感じられません。米国の軍事戦略に簡単に巻き込まれてしまわないかと不安は募るばかりです」(柳沢協二氏=前出)
暴君トランプと一緒に軍拡を約束するとは、ハッキリ言って“悪魔の契約”だ。亡国政権の独断専行によって、おぞましい軍拡の先の地獄絵を、国民はいよいよ覚悟しなければいけない。
リテラからの転載 国谷裕子がNHK『クロ現』降板の舞台裏を告白! 現場では続投方針だったのに突如、上層部から交代指示が…
国谷氏のキャスターとしての矜持が伝わってくる
このような人間の口を封じることはできない
それを応援、指示する者はこの『キャスターという仕事』(岩波新書)を
購入して是非読むべきだ
すべてのキャスターに一読をすすめる
それにしてもアベ政権はなんて卑劣なんだ!
トランプと同罪ではないか!
国谷裕子がNHK『クロ現』降板の舞台裏を告白! 現場では続投方針だったのに突如、上層部から交代指示が…
2017.01.25
トランプ大統領のメディア攻撃に注目が集まっているが、それを見るにつけ、日本の宰相はトランプの先駆けだったとつくづく感じずにいられない。トランプのようにいちいち言葉にしないだけで、この国の総理大臣は放送法をねじ曲げて解釈し、圧力文書をキー局に送りつけるなどの“攻撃”を仕掛けてきた。そして、トランプよりもっと露骨に、萎縮しないキャスターたちを次々に降板に追い込んだことは記憶に新しい。
そのキャスターのひとりが、NHKの看板番組『クローズアップ現代』のキャスターを23年間にわたって務めた国谷裕子氏だ。その国谷氏が、先日、初の著書『キャスターという仕事』(岩波新書)を出版。約1年のときを経て、ついにあの降板騒動についても言及しているのだ。
まず、国谷氏の番組降板が判明したのは2016年1月7日のことだったが、本人に降板が伝えられたのは、その約2週間ほど前の15年12月26日だったという。
「〈クローズアップ現代〉を管轄する組織の責任者から、番組のキャスターとしての契約を二〇一六年度は更新しないことが決定された旨、伝えられた。(中略)NHKから契約更新しないと言われれば、それで私の〈クローズアップ現代〉でのキャスター生活は終わりになる」
国谷氏も「体力や健康上の理由などで、いつか自分から辞めることを申し出ることになるだろうと思っていた」というが、「(契約を更新しない理由が)番組のリニューアルに伴い、ということになるとは想像もしなかった」らしい。
実際、国谷氏が降板を言い渡される1カ月前も、制作現場では来年度も国谷氏でキャスター継続と提案しており、「一緒に番組を制作してきたプロデューサーたちは、上層部からのキャスター交代の指示に対して、夜一〇時からの放送になっても、番組内容のリニューアルをしても、キャスターは替えずにいきたいと最後まで主張した」というのだ。
国谷氏の降板は「上層部からのキャスター交代の指示」によって決定した──。国谷氏は降板を告げられたとき、こんなことを考えたという。
「ここ一、二年の〈クローズアップ現代〉のいくつかが浮かんできた。ケネディ大使へのインタビュー、菅官房長官へのインタビュー、沖縄の基地問題、「出家詐欺」報道」
国谷氏が頭に浮かべたこれらのうち、最大の原因として考えられているのが、いわずもがな菅義偉官房長官への集団的自衛権にかんするインタビューだ。この14年7月3日の放送で、国谷氏は舌鋒鋭く集団的自衛権の行使にかかわる問題点を次々に質したが(詳しくは既報を参照)、放送終了後に菅官房長官が立腹し、官邸サイドはNHK上層部に猛抗議をしたと「FRIDAY」(講談社)が報じたほどに問題となった。
同誌によれば、官邸は“国谷が食い下がったことが気にくわなかった”というが、このときの国谷氏の質問はいずれもが正鵠を射るもので、キャスターとして当然、聞き出すべき事柄ばかりだった。にもかかわらず、「相手に対する批判的な内容を挙げてのインタビューは、その批判的な内容そのものが聞き手自身の意見だとみなされてしまい、番組は公平性を欠いているとの指摘もたびたび受ける」(国谷氏の著書より)という現実がある。
しかし、国谷氏の考え方は違う。「聞くべきことはきちんと聞く、角度を変えてでも繰り返し聞く、とりわけ批判的な側面からインタビューをし、そのことによって事実を浮かび上がらせる、それがフェアなインタビュー」と考えるからだ。
「菅官房長官への私のインタビューは、様々なメディアで、首相官邸周辺の不評を買ったとの報道がなされた。それが事実かどうか私は知らないが、もしそうだとすれば、『しかし』という切り返しの言葉を繰り返したことが、不評を買うことにつながったのかもしれない。まだまだ、『聞くべきことはきちんと聞く、繰り返し聞く』ということには、様々な困難が伴うのだろうか」
だが、国谷氏が安倍政権から「不評を買った」のは、これだけではないだろう。たとえば、15年7月23日に放送された『クロ現』の特集「検証 安保法制 いま何を問うべきか」において、国谷氏がこだわった点はこんなことだった。
番組づくりの上で、担当ディレクターは番組の構成表において「なかなか理解が進まない安保法制」と書き出していた、という。当時、当たり前のようにメディアは安保法制を語る際に使っていたフレーズだが、国谷氏はこの言葉に違和感を抱く。
「果たしてこの言葉の使い方は正しいのだろうか。『なかなか理解が進まない安保法制』という言葉は、文脈のなかでの置かれ方によっては、安保法制に反対が多いのは、人々の理解がまだ進んでいないからだ、という暗黙の示唆を潜ませることにならないだろうか。この言葉は、今は反対が多いが、人々の理解が進めば、いずれ賛成は増える、とのニュアンスをいつの間にか流布させることにもつながりかねないのではないだろうか。そういう言葉を、しっかり検証しないまま使用してよいのだろうか、私にはそう思えた」
テレビは映像の力を発揮するメディアだ。しかし他方で映像は全体像を映し出すものではないし、ときとして人びとの想像力も奪うことがある。だからこそ、国谷氏は「言葉の持つ力」を信じ、同時に言葉に慎重だった。官製報道などではない、いま現在の問題を深く掘り下げて視聴者とともに考える──そうした番組をつくってきたのだという矜持が、国谷氏の文章には滲み出ている。
国谷氏は本書のなかで、「私は長い間、かなり自由にインタビューやコメントが出来ていたように感じる」と書いている。そして「気をつけていたのは、視聴者に対してフェアであるために、問題を提起するとき、誰の立場にたって状況を見ているのか、自分の立ち位置を明確に示すようにしていたことだ」という。
「例えば、沖縄の基地問題を沖縄に行って取り上げるとき、基地負担を過重に背負っている沖縄の人々の目線で取り上げていることをはっきり伝えていた。基地問題をめぐっては、定時のニュースなどで政府の方針をたびたび伝えていれば、逆に〈クローズアップ現代〉で沖縄の人々の声を重点的に取り上げたとしても、公平公正を逸脱しているという指摘はNHK内からは聞こえてこなかった。NHKが取るべき公平公正な姿勢とはそういうものだと、長い間、私は理解し、仕事をしてきていた」
しかし、「ここ二、三年、自分が理解していたニュースや報道番組での公平公正のあり方に対して今までとは異なる風が吹いてきていることを感じた」と、国谷氏は振り返る。その時期は、安倍政権がメディアへの圧力を強めてきたタイミングと重なる。
「その風を受けてNHK内の空気にも変化が起きてきたように思う。例えば社会的にも大きな議論を呼んだ特定秘密保護法案については番組で取り上げることが出来なかった。また、戦後の安全保障政策の大転換と言われ、二〇一五年の国会で最大の争点となり、国民の間でも大きな議論を呼んだ安全保障関連法案については、参議院を通過した後にわずか一度取り上げるにとどまった」
これは『クロ現』に限った話などではなく、同時進行で他局でも起こったこと、そしていまもつづいている問題だ。報道はいつしか骨抜きにされ機能不全に陥り、たとえば南スーダンの戦闘が「衝突」と言い換えられても大した問題にならないという社会になってしまった。
オックスフォード大学出版局は、16年を代表する言葉として、客観的な事実が重視されず、感情的な訴えが政治に影響を与える状況を意味する「ポスト・トゥルース」を選んだ。だが、日本は数年前からすでにポスト・トゥルースの時代に入っている。このようななかで、メディアのあり方はどうあるべきか。国谷氏はこう綴っている。
「伝えられる情報のなかに事実ではないものが多くなっているとすれば、人々の生活に大きな影響を及ぼしかねない決断をする立場にある人間に対して、その人間から発せられた言葉の真意、言葉の根拠を丁寧に確かめなくてはならない。選択された政策や経営戦略などを検証するために、『問うべきことを問う』ことがますます求められていくのではないだろうか。ジャーナリズムがその姿勢を貫くことが、民主主義を脅かすpost-truthの世界を覆すことにつながっていくと信じたい」
(水井多賀子)
日刊ゲンダイより 壮大なペテン師アベ 「共謀罪はテロ対策」だって?
壮大なペテン 「共謀罪はテロ対策」という真っ赤なウソ
大新聞が17日の朝刊で一斉に、〈「共謀罪」対象半減へ〉と報じていた。対象となる犯罪を、原案の676から300前後まで減らすことを政府が検討しているという内容で、「懲役・禁錮4年以上の重大な犯罪」の種類が多過ぎることに与党の公明党が懸念を示しているため配慮した、という解説も全紙一緒だ。犯罪数を減らすことで批判を和らげようという政府サイドのリークなのだろうが、そもそもなぜ、相談しただけで罰せられるような法律が必要なのかの政府の立場は、相変わらず欺瞞だらけだ。
政府が大新聞を通じて説明する「共謀罪」の必要性はこうだ。国際的な組織犯罪に対応するため、国連が2000年に採択した「国際組織犯罪防止条約」を締結するには、国内法を整備しなければならない。20年の東京五輪を念頭に「共謀罪」を整備して、テロ対策で各国と連携を強化する必要がある─―というものだ。そのために罪名も「テロ等組織犯罪準備罪」に変える。
しかし、この「国際条約で必要」というのはウソ八百のデタラメだ。法律の専門家の多くが現行法で対応できると主張している。実際、政府は過去に国会で「条約を批准した国で新たに法整備をした国はどこか」と質問されて、「例えばノルウェー」としか答えられなかった。ほとんどの国が現行法で対応しているのである。情報法制に詳しい中川亮弁護士がこう言う。
「政府は条約締結のために『共謀罪』の立法化が必要としていますが、この条約は『国連越境組織犯罪防止条約』という名称で、国をまたぐ国際性のある犯罪を対象にしているというのが日弁連の立場です。どうしても立法化するというのであれば、国際犯罪に限った条件を付けるべきで、実際、(カリブ海の小国)セントクリストファー・ネビスは、越境性を要件とした法律を制定しています。加えて日本は、国際人権条約のように国内制度と違う条約でも批准している。つまり、国内法整備は条約批准の条件でも何でもないのです。
政府の説明には論理の一貫性がなく、結局、条約に“悪乗り”して、都合のいい法律を作ろうとしているというのが実態ではないでしょうか」
公明党が“難色”というのも、毎度のパターンだ。
安保法制もカジノ法もそうだった。「我々がいるから自民党にブレーキをかけられた」と釈明するための創価学会員向けのポーズである。法案が正式に国会に提案される際には、「公明党の指摘を受け、犯罪数を減らした」とアピールするシナリオだろう。“下駄の雪”が本気で反旗を翻すはずがない。
■監視社会で市民は沈黙、民主主義は崩壊
「テロ対策」というのも悪質なウソだ。名称を「共謀罪」から「テロ等組織犯罪準備罪」に変えても、その中身は03、04、05年と3度も国会で廃案になった法案とほとんど変わらない。
原案には窃盗や道交法違反も含まれている。さすがに今後、除外されそうだが、ナント、事前に“共謀”できない業務上過失致死や傷害致死まで入っている。これらがテロとどう関係するのか。メチャクチャである。
テロ対策も東京五輪も全て、国民を騙しやすい後付けの屁理屈。すり替えであり詭弁だ。壮大なペテン劇を繰り広げてまで政府が共謀罪にこだわるのは、間違いなく別の理由があるからだ。
民主党政権時代に法相だった平岡秀夫元衆院議員は、誰が何のために「共謀罪」に固執しているのかという問いに、「監視社会をつくりたい自民党と、捜査の武器を拡大させたい警察官僚だ」と東京新聞で断言していた。
監視強化で市民を管理し、国家の統制下に置く。共謀罪は、既に成立済みの秘密保護法や改正盗聴法とセットで機能させる。市民は監視を恐れ、沈黙し、政府に従順になる。民主主義は崩壊。現代の治安維持法と呼ばれるゆえんである。前出の中川亮弁護士もこう言う。
「共謀罪によって、『内心の意思』が罰せられることになります。具体的な行動がないわけですから、会話やメールの段階で情報収集が行われる。捜査機関が恣意的に検挙する恐れがあるのはもちろんのこと、日常的に個人のプライバシーに立ち入って監視するような捜査が行われる可能性があります。何度も廃案になったのに、政府が共謀罪の法制化に固執するのは、『早い段階で市民の内心をコントロールしたい』というのが真の目的なのだろうと思います」
犯罪対象を300に絞り込んだところで、国家による市民の監視を無制限に容認する人権侵害の本質は変わらないのである。
目指すは、戦前型の富国強兵国家の復活
テロや五輪にかこつけて、共謀罪の法制化を急ぐ安倍政権のドス黒い思惑は、この4年間のヤリ口を思い出せば分かるはずだ。法政大教授の山口二郎氏が東京新聞のコラムで、「かこつけ総理」と次のように喝破していた。
〈南スーダンに派遣された自衛隊の新任務は海外での自衛隊の武力行使を可能にするための、積極的平和主義に名を借りた駆けつけならぬ「かこつけ警護」だと思った。この「かこつけ」は、安倍政治の本質を表す言葉となった〉
〈成長戦略にかこつけて年金基金を株式市場に投入して損を出し、地域活性化にかこつけてカジノ、とばくを合法化した。働き方改革にかこつけて、残業代を払わないことを正当化する労働基準法改悪を実現しようとする。極め付きは共謀罪である〉
ペテンを駆使して、自らを正義とするのが安倍首相の常套手段。それでも能天気な国民は、67%という驚異の高支持率を与えるのだから、笑いが止まらないだろう。
安倍の正体は、口先の「平和」とは正反対。フィリピンの現地メディアが伝えたように、中国包囲網しか頭にない“武器商人”のような人物である。ドゥテルテ大統領との会談で、安倍が「ミサイル供与を申し出た」と報じられた。菅官房長官が否定し、真偽は不明だが、長年の「武器輸出三原則」を大転換した首相である。対中国でフィリピンを取り込むためなら、1兆円の大盤振る舞いとセットで武器供与を持ちかけても不思議じゃない。
政治学者の五十嵐仁氏はこう言った。
「平和憲法の理念に従えば、日本の首相は『非軍事』を世界に広め、紛争を諭さなければなりません。ところが安倍首相は、逆のことをやっている。『共謀罪』の法制化で安倍首相が目指しているのは、『昔の日本を取り戻す』ということなのでしょう。対外的には強国として世界情勢に影響力を及ぼし、国内ではマスコミを押さえつけ、反政府の運動を取り締まる。憲法を変えて普通の国になり、自衛隊を海外に派遣して大国となる。戦前型の富国強兵国家を復活させたいのでしょう」
菅は共謀罪について、「一般人が対象になることはあり得ない」と言ったが、戦前の治安維持法も当時の警視庁当局が「世間の人が心配するほどのものではない」と説明していたという。権力者が国民を騙し何をするのか。歴史が教えてくれている。
話し合うことが罪になる共謀罪に反対しよう/ パンフ 1/24発刊!
戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会より
月別: 2017年1月
話し合うことが罪になる共謀罪に反対しよう
安倍政権は、話し合うことが罪になる共謀罪新設法を今通常国会で成立させようとしています。共謀罪法案は2003年に国会に提出されましたが、同法が法律に違反する行為を実行しなくとも話し合い合意するだけで市民を処罰する思想・言論取り締まり法であることが明らかになり、世論の反対で三度の廃案に追い込まれました。その共謀罪の名前を「テロ等組織犯罪準備罪」と変えただけで、四度目の国会提出をしようというのです。これほど世論を愚弄した話はありません。政府は、今回の法案は適用対象を「団体」ではなく「組織的犯罪集団」とした、「共謀」だけではなく「共謀」+「準備行為」と適用要件を厳しくしたから市民の危惧はなくなったとしていますが、これは嘘です。今回だされた政府案も与党が政府案では議会を通らないとして2006年に提出した修正案にもられていたものです。前に修正案として示された内容を、あたかも新たな法案かのようにうちだす政府のやり口は絶対に許すことはできません。
●戦争法と一体の共謀罪
今回の「テロ等組織犯罪準備罪」は、三度廃案になった共謀罪を東京オリンピックの成功のためにテロ対策といえば世論は反対できないだろうと考えだされたものですが、ここに同法の狙いが明らかにされています。要するに共謀罪(=「テロ等組織犯罪準備罪」)は戦争法と一体の戦争をできる国つくりに向けて、国内の市民運動、労働運動など全ての運動を思想・言論段階から取り締まろうというものです。
共謀罪反対運動は戦争法、憲法改悪反対運動と一体のたたかいです。話しあうことが罪になる共謀罪新設法に反対しましょう。同法の制定を許してはなりません。
●話しあうことが罪になる 一からわかる共謀罪パンフ発刊 頒価200円 48ページ
共謀罪パンフが1月24日発刊されます。同パンフは、共謀罪とはどういう法律なのかを分かりやすく説明したものです。さまざまな角度から共謀罪の問題点を明らかにしています。
■主な内容
・共謀罪って何? 海渡雄一(弁護士)
・各界からの声
・共謀罪がつくられると、どんなことに適用されるの
・共謀罪をつくらなくとも条約は批准できる
・戦時法制としての治安維持法と共謀罪
・加速する監視社会の動き
スノーデンが日本に知らせたかったこと小笠原みどり(ジャーナリスト)
ほか
・国会で明らかになった共謀罪の危険な本質
・適用事例四コマ漫画■編集発行
「秘密保護法」廃止へ!実行委員会(平和フォーラム 新聞労連、他)
解釈で9条を壊すな!実行委員会(許すな!憲法改悪・市民連絡会憲法会議、他)
盗聴法廃止ネットワーク(盗聴法に反対する市民連絡会日本国民救援会、他)
■連絡先 :日本消費者連盟
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田1-9-19-207
Tel: 03-5155-4765 Fax: 03-5155-4767 email: office.j@nishoren.net
汚染土再利用、諮問認めず「環境省、説明不十分」 毎日新聞
さんざん拡散させてうやむやにさせる気だね。
汚染土再利用、諮問認めず「環境省、説明不十分」
東京電力福島第1原発事故の除染で出た汚染土を再利用する環境省の方針に対し、管理方法の説明が不十分などとして原子力規制庁が疑義を呈していることが分かった。再利用に伴う被ばく線量については本来、規制庁が所管する放射線審議会に諮られるが、同審議会への諮問も認めていない。規制庁は環境省の外局で、再利用は「身内」から疑問視されている。【日野行介】
環境省は昨年1~5月、放射線の専門家らを集めた非公開会合で汚染土の再利用について協議した。原発解体で出る金属などの再利用基準は放射性セシウム濃度が1キロ当たり100ベクレル以下(クリアランスレベル)の一方、8000ベクレルを超えると特別な処理が必要な「指定廃棄物」になることなどを考慮し、汚染土の再利用基準を検討。6月、8000ベクレルを上限に、道路の盛り土などに使いコンクリートで覆うなどの管理をしながら再利用する方針を決めた。
関係者によると、その過程で環境省は8000ベクレルの上限値などについて、放射線審議会への諮問を規制庁に打診。規制庁の担当者は、管理の終了時期や不法投棄の防止策など、具体的な管理方法の説明を求めた。その際、「管理せずに再利用するならクリアランスレベルを守るしかない」との原則を示した上で、「普通にそこら辺の家の庭に使われたりしないのか」との懸念も示したという。これに対し環境省が十分な説明をできなかったため、規制庁は審議会への諮問を認めなかった。
放射線審議会は法令に基づき設置され、放射線障害を防ぐ基準を定める際に同審議会への諮問が義務づけられている。指定廃棄物の基準を8000ベクレル超と認めたのも同審議会だった。
再利用を進める環境省除染・中間貯蔵企画調整チームの当時の担当者は「規制庁に相談したが、諮問までいかなかった」と取材に回答。原子力規制庁放射線対策・保障措置課は「どういう形で何に使うのか、管理はどうするのかという具体的な説明をしてもらえなければ、情報不足で安全かどうか判断できないと環境省には伝えた」と話している。
解説 8000ベクレル上限は矛盾
汚染土の再利用を巡り、原子力規制庁が所管の放射線審議会への諮問を認めないのは、8000ベクレルを上限とする矛盾を認識しているからに他ならない。
そもそも8000ベクレルは、これを超えれば特別な処理が必要になる「指定廃棄物」の基準だ。環境省は今回、この8000ベクレルを上限に、管理しながら汚染土を再利用する方針を決めたが、これはすなわち「特別なゴミ」が、ある一線から突然「再生資源」に変わることを意味する。規制庁が環境省に「管理せずに再利用するならクリアランスレベル(100ベクレル以下)しかない」と原則論を強調したのも、こうしたことを疑問視しているからだとみられる。
にもかかわらず、法令で義務づけられた審議会への諮問を経ずに汚染土の再利用基準を決めたのは異例だ。環境省の強引な姿勢が問われている。【日野行介】
「テロ等準備罪」をにたにた笑って差し出す権力
「共謀罪」not=「テロ等準備罪」というが・・・
戦前を知らぬものはしあわせだね
いやいや、オキナワの人に向かって「土人」だの「シナ人」などといい
それを「差別用語ではない」と言い切れる大嘘つきの政権には
もうなにひとつ信用がならない
共謀罪法案、通常国会に提出=名称「テロ等準備罪」、処罰要件を追加-政府
2017 1月9日(月)
政府は5日、犯罪の計画段階で処罰可能とする、いわゆる「共謀罪」を創設するための組織犯罪処罰法改正案を20日召集予定の通常国会に提出する方針を固めた。2020年の東京五輪・パラリンピック開催に向け、テロ対策としての性格を前面に出すため、名称を「テロ等準備罪」とし、資金調達などの具体的準備行為を処罰要件に加える。これまで慎重姿勢を取ってきた公明党の了承を得られるかが焦点となる。
共謀罪に関する国内法整備は、政府が2000年に署名した国際組織犯罪防止条約を締結するための条件。187の国・地域が締結済みで、日本も国際機関から早期対応を迫られている。
安倍晋三首相は5日の自民党役員会で「テロ準備罪という形の法案を出す」と明言。菅義偉官房長官も記者会見で「国際社会と協調して組織犯罪と戦うため条約締結が不可欠だ。法整備はしっかり進める必要がある」と強調した。(2017/01/05-18:39)
共謀罪「一般人は対象外」=菅官房長官
時事通信 1/6(金) 12:34配信
東京都水道水のセシウム汚染…福島原発事故から5年後のナゼ(女性自身からの転載)
東京都水道水のセシウム汚染…福島原発事故から5年後のナゼ
女性自身 2016/10/28(金) 6:00配信
’11年の福島原発事故を受けて、原子力の安全確保のために環境省に新たに設置された原子力規制委員会。そのホームページ(HP)に「上水(蛇口水)モニタリング」というデータが公開されていることをご存じだろうか。ここには47都道府県の水道水の放射性物質の検出結果が一覧表になっている。その表を見てみると、なんと11の都県で’16年1~3月の時点で放射性セシウムが検出されているのだ。
【宮城県(仙台市)】放射性セシウム137・1.1ミリベクレル
【山形県(山形市)】放射性セシウム137・0.76ミリベクレル
【福島県(福島市)】放射性セシウム137・1.2ミリベクレル
【茨城県(ひたちなか市)】放射性セシウム137・0.8ミリベクレル
【栃木県(宇都宮市)】放射性セシウム137・1.7ミリベクレル
【群馬県(前橋市)】放射性セシウム137・1.3ミリベクレル
【埼玉県(比企郡)】放射性セシウム137・1.3ミリベクレル
【千葉県(市原市)】放射性セシウム137・0.57ミリベクレル
【東京都(新宿区)】放射性セシウム134・0.43ミリベクレル、放射性セシウム137・1.7ミリベクレル
【神奈川県(横浜市)】放射性セシウム137・0.4ミリベクレル
【新潟県(新潟市)】放射性セシウム137・0.38ミリベクレル
「東京都水道局のHPを見ると’11年4月4日に放射性ヨウ素131(8ベクレル)が検出されて以降、水道水から1回も放射性物質が検出された報告は載っていません。ところが原子力規制委員会のモニタリング結果では、いまだにセシウム134と137を合わせると約2ミリベクレルの放射性物質が含まれているんです」
こう解説するのは経産省の諮問機関・原子力小委員会委員である伴英幸さん(原子力資料情報室共同代表)。
「福島原発事故後、岩手県から首都圏、神奈川県や新潟県の一部まで非常に広範囲に、福島原発から放出された90京ベクレル(京は兆の1万倍)ともいわれる大量の放射性物質が降りました。’11年3月22日に、東京都の水道水からも210ベクレル/kgという放射性物質(ヨウ素131)が検出され、金町浄水場付近の住民に代替飲料として水のペットボトルが配られたことを記憶している人も多いはず。当時汚染されたエリアといま水道水から放射性物質が検出されているエリアはほぼ重なります」(伴さん・以下同)
驚くのは、現在、福島県の水道水より東京都の水道水に含まれる放射性物質のほうが多いことだ。それにしても事故から5年半たったいまもなぜ水道水のセシウム汚染が続いているのだろうか?
「現在観測されるセシウム134と137は半減期(放射線を出す量が半分になる期間)からいって(134と137が)1対4の比率ならば福島原発事故で出たものと特定されます。東京都の水道水の含有比率はまさに1対4なので、福島から飛来したものに間違いない。都の水道水は利根川水系、荒川水系、多摩川水系の水が混じっている。いずれかの水源の上流部から川底に沈殿しているセシウムが砂などといっしょにいまだに流れてきていると考えられます」
原発事故で汚染? 中古車の輸出停止 5年で1万3000台 / 東京新聞より
やっと出てきた!東京新聞より転載
原発事故で汚染?
中古車の輸出停止
5年で1万3000台
東京電力福島第一原発事故が起きた2011年から2016年10月末までの約5年間に、全国の14港湾施設で輸出しようとしていた中古の自動車と建設重機の一部から国の基準を超える放射性物質が検出され、計約13000台が輸出差し止めになっていたことが、業界団体の集計で分かった。汚染源は特定されていないが、原発事故前は検出事例がなく、事故後に汚染された車両が各地に流通していた可能性が高い。
輸出を差し止められた車や重機の大半は、事業者が洗浄後に売却したとみられる。ピークは2012年の6540台で、2015年は239台と減少傾向だが、原発事故の影響が改めて浮き彫りになり、国や事業者による対策が引き続き求められている。
輸出向けの中古車や重機の売買はオークションが主流で、国内の取引は線量を測定する規定もないため、荷主が汚染を知らないまま購入するケースが少なくない。業界団体の日本港運協会(東京)の集計には、車や重機を分解して輸出するケースは含まれておらず、汚染された台数はさらに多い可能性もある。
2011年8月~2016年10月の間、同0.3マイクロシーベルト以上は約13000台。2016年は10月末までに146台だった。福島県の業者は「除染で使った車や重機の再利用は、国内では風評被害が心配されるので、需要のある東南アジアなどへ輸出するしかないのが実情だ」と話している。
半田滋/自衛隊「オスプレイ導入」を中止できない、日本政府の呆れた事情
自衛隊「オスプレイ導入」を中止できない、日本政府の呆れた事情
貧乏くじを引かされ続けていいのか?
首都圏にオスプレイがやってくる
沖縄の人々がおそれていた垂直離着陸輸送機「オスプレイ」の事故が遂に起きた。
「墜落」(米軍準機関紙『星条旗』)した機体は大破して沖縄県名護市の海岸に無残な姿をさらけ出した。集落付近の海岸からの距離はわずか80メートル。大惨事となる恐れもあった。
開発段階から墜落事故を繰り返し、性能が安定しないオスプレイ。沖縄県の米海兵隊普天間基地に24機配備されている。墜落したのはその中の1機だ。
2017年1月からは千葉県木更津市の整備施設で定期整備が始まり、沖縄からオスプレイがやってくる。
17年度には東京の米空軍横田基地に別の10機が配備され、18年度からは陸上自衛隊による導入が始まり、自衛隊機としてのオスプレイは当面17機となる。
墜落の恐怖にさらされるのは、もはや沖縄だけではない。近い将来、米軍機と自衛隊機合わせて51機もオスプレイが日本全土を飛び回るのだ。国民の安全・安心のためには、せめて自衛隊への配備は中止すべきではないのか。
そもそも自衛隊への配備は、異例の経過をたどった。
本来、自衛隊の武器類はユーザーの自衛隊が選定する。具体的には陸海空自衛隊を統合運用する制服組トップの防衛省統合幕僚監部が、20年先の安全保障環境を見通して策定する「統合長期防衛戦略」をたたき台に、陸海空の各幕僚監部が武力攻撃事態を想定して武器類の導入を要求し、予算化される。
陸上自衛隊幹部は「『統合長期防衛戦略』を受けて陸上幕僚監部がつくった『陸上自衛隊長期防衛戦略』に『オスプレイ』の名前はありませんでした。情報は入ってくるので検討対象になったはずだが、採用されなかった」と打ち明ける。
陸上自衛隊が導入を求めなかったのは、性能上の理由によるところが大きい。オスプレイは輸送機だ。陸上自衛隊はオスプレイの二倍以上の人員や物資を空輸できるCH47大型ヘリコプターを55機も保有している。速度、航続距離こそオスプレイが優れているが、狭い日本で活用するにはCH47で十分と判断した。
では、なぜ陸上自衛隊は導入することになったのか。
米軍が沖縄配備を進めた12年当時、沖縄から強い配備反対の声が上がった。これを見た民主党政権の玄葉光一郎外相は「安全性を訴えるため自衛隊も保有すべきだ」と提案、当時の森本敏防衛相が同調して13年度防衛費に調査費800万円を計上した。
「沖縄の民意」よりも「米軍の意向」を優先したい民主党政権と外務省、防衛省が共振したのである。
同年12月に衆院が解散され、選挙で勝利した自民党が政権に復帰すると、安倍晋三内閣は14年度予算に「オスプレイを陸上自衛隊に配備するための調査費1億円」を計上、さらに導入目標を15年度と公表した。
民主党政権で芽吹いたオスプレイ導入の兆しは、自民党政権で熟成され、異例の「政治主導による武器調達」が実現した。文民である政治家が「これで戦え」と軍事の専門家である制服組に武器を下げ渡したのである。
沖縄で墜落したオスプレイの同型機は、事故からわずか6日後に飛行再開した。
民進党の蓮舫代表は「事故原因や再発防止策の説明が先だ」と政府や米軍を批判するとともに「私は国民の感情というのはとても大切なものだと思う」と述べたが、自衛隊配備のいきさつを知るならば、米軍のオスプレイを批判しても「自衛隊への配備撤回」とは間違っても言えないだろう。
もとより日本政府が米軍の運用に注文をつけることはない。あまりにも早い飛行再開をみても「米軍の言いなり」であることがわかる。
さらに自衛隊への配備について、最大野党の民進党さえ撤回を求めにくい状況にあるとすれば、もはやわたしたちは51機のオスプレイが事故を起こさないよう祈るしかないのだろうか。
防衛省HPに載る「ウソの数字」
隣の長崎県佐世保市に発足する陸上自衛隊版海兵隊の「水陸機動団」を空輸するのに、佐賀空港は山と海をひとつ隔てただけという地理的優位性に加え、赤字の佐賀空港を抱える佐賀県当局には「札束をチラつかせれば何とかなる」という、都合のよい地元歓迎論が根拠になっている。
昨年(2015年)7月、防衛省は「陸上自衛隊の佐賀空港利用について」とのパンフレットを作成し、地元説明会を開いた。墜落などの危険性についてパンフには「開発途中においては大きな事故が4回発生しましたが、機能の追加や再設計など事故原因への対策を行い、技術的な問題点はクリアされています」と安全性を強調している。
本当に安全なのだろうか。
米国防総省は、死者の発生や200万ドル(約2億3500万円)以上の損害を出した重大事故を「クラスA」と称し、事故率は10万飛行時間当たりで計算する。日本政府は、米軍がオスプレイを沖縄に配備する際、オスプレイのクラスA事故は1.93(2003~12年)という数字を示し、米海兵隊が持つ航空機全体の平均2.45(同)より低く、安全だと説明した。
しかし、12年以降は上昇に転じ、15年9月末で2.64と現在の米海兵隊航空機全体の平均と並んでいるが、防衛省は今でもホームページに1.93の数字を載せ、国民をミスリードする。
事故率は全機種平均の41倍
実戦ではどうなのか。
米海軍安全センターは「海兵隊航空機アフガニスタン事故報告書」(2010~12米会計年度)を公表する中で、海兵隊航空機12機種のクラスA~Dの事故率は26.69で、3746.8時間に1件の割合で事故が発生したことを明らかにした。
この中でオスプレイの事故率は1105.56で全機種平均の約41倍と極めて高く、90.4時間に1件の割合で発生した。クラスAの事故率は138.19で、12機種平均の21倍にも達した。
飛行時間は同じ輸送機のCH53Eが1万9480. 7時間、CH53Dが5630. 5時間となっているのに対し、オスプレイは723.6時間と極端に少ない。新型機なのでアフガンの砂地での運用に不慣れなのかもしれないが、実戦に不向きという致命的な弱点をさらけ出した。
オスプレイは昨年5月、ハワイで着陸に失敗し、機体は大破して乗員2人が死亡した。米太平洋海兵隊は「巻き上げた砂塵をエンジンが吸い込み、出力が低下した」と原因を操縦ミスに求め、日本の防衛省も追認した。砂地での運用はアフガンで経験済みではなかったのだろうか。
今回の沖縄での事故は、在日米軍によると、夜間の空中給油中、MC130給油機から伸びた給油ホースにオスプレイのローターが当たり、損傷したというものだ。
オスプレイは全幅25. 78メートルの機体の左右に直径11.6メートルの巨大なローターが付いている。給油口は操縦席の先に突き出ているものの、ローターが巨大ゆえに伸びてきたホースがあたりやすいという特性があるのではないだろうか。
空中給油機を持つ航空自衛隊の杉山良行航空幕僚長は会見で「(陸上自衛隊のオスプレイも)米軍と同様の訓練をやると聞いている」と語り、夜間の空中給油訓練を否定していない。
日本人にとって安心材料は何一つないようだ。
イスラエルもキャンセルしたのに…
日本政府は15年度5機(516億円)を発注したのを皮切りに、16年度は4機(447億円)と全17機のうちすでに9機を発注した。
1機あたり100億円強の計算だが、関連経費が加わるためそれだけではすまない。米国防総省は昨年5月米議会に対し、売却総額は推定で計30億ドル(当時約3600億円)に上ると報告している。
やっかいなのは日本政府が米政府から直接購入するFMS(対外有償軍事援助)方式となっていることだ。
FMSとは米国の武器輸出管理法に基づき、①契約価格、納期は見積もりであり、米政府はこれらに拘束されない、②代金は前払い、③米政府は自国の国益により一方的に契約解除できる、という不公平な条件を受け入れる国にのみ武器を提供する米政府の武器売買システムだ。
つまり価格、納期は米政府の「言いなり」になってもらい、「言いなり」にならない場合は解約されてもやむを得ないというトンデモない商売だ。
購入する側に著しく不利な内容だが、高性能の武器が欲しい各国は甘んじてFMS方式を受け入れる。米政府は世界160ヵ国とこの方式で武器売買しており、日本も例外ではない。
何のことはない。口先だけの安全・安心にすがり、不安定な武器取引を承知のうえで米政府の言い値でオスプレイを買うというのである。
在日米軍や日本政府が言うとおり、オスプレイが高性能で安全というなら、なぜ世界最強の米陸軍が採用しないのだろうか。
理由は容易に推測できる。陸上自衛隊と同様、CH47やUH60といった高性能のヘリコプターを多数保有しており、費用対効果や性能に不安があるオスプレイは不要ということだろう。
またオスプレイの高速性が魅力というなら、なぜ米政府は大統領専用ヘリコプターとして採用しないのか。不安がないなら大統領はじめVIPが乗って安全性を、身をもって実証すべきではないのか。
購入の意思を示していたイスラエルがキャンセルしたため、米国以外で本格的に導入するのは日本だけとなった。明らかな貧乏クジと分かりながら、大金をつぎ込み、導入するのだ。
安倍政権は、国民から寄せられる自衛隊への信頼を裏切るようなオスプレイの導入を断念すべきである。