茅ちゃん日記

世の中のこと、思うことをつづります

「日本会議」がねらう教育界

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2018年09月10日 16:10

ねらわれた教育現場「日本会議」関係者が侵食

 学長による「独裁」ともいえる法人運営が教職員からの反発を生んでいる、国立大学法人福岡教育大学。大学の頂点に君臨するのは、櫻井孝俊学長。独裁的運営を始めた寺尾愼一前学長の後継とされ、非民主的大学運営はそのまま継承されている。その福教大の経営協議会の委員に、複数の日本会議関係者が就任していることがわかった。日本会議憲法改正を目指すウルトラ右翼団体で、森友学園問題でも改ざんされた決裁文書に名前が登場していた。
(ニュースサイト「HUNTER」の協力を得て転載)

汚れた教育行政

福岡教育大学(福岡県宗像市

 教育行政が前代未聞の不祥事に揺れている。7月4日に受託収賄の疑いで東京地検特捜部に逮捕されたのは、文部科学省科学技術・学術制作局長の佐野太容疑者(58)。東京医科大学(東京都新宿区)を、文科省の私立大学支援事業に選定させることの見返りに、自分の息子を東京医大に合格させた「裏口入学」容疑がかかっている。医学部人気が高止まりするなか、金銭ではなく職務上の権限を取引材料にしたことはまさに「前代未聞」の不祥事、いや犯罪だ。

 さらに同26日には、文科省前国際統括官の川端和明容疑者(57)が収賄容疑で逮捕された。宇宙航空研究開発機構JAXA)に出向中の2016年、医療コンサルタント業者の依頼で宇宙飛行士を講師として派遣する際に謝礼を受け取り、金額にして約140万円相当の接待などを受けていたとされる。人気の高い宇宙飛行士の講演について、謝礼や接待を受けて優先的に取り扱ったというから、もはや官僚の倫理観はブローカー並みに落ちるところまで落ちたようだ。

 30日には、40代の文科省職員が懲戒免職された。京都教育大学に出向中の15年10月ごろから、学生保護者の教育後援会費約770万円を横領した疑いだという。朝日新聞などによると、同職員は横領した後援会費を「ゲームなどの課金」の支払いに充てたという。

 たった1カ月の間に局長級が2人も逮捕される「異常」事態。文科省が狙い撃ちされているようにも見えるのは、前川喜平前事務次官が積極的に官邸批判を行っていることと無関係ではないだろう。面目を潰された官邸による、「意趣返し」「リーク」と見ることもできる。
 しかし、教育行政をめぐるニュースが近年、きな臭いものばかりだったのもたしかだ。

 この2疑惑については国会でも激しい論戦が繰り広げられたが、さらに医学部新設をめぐっては、恣意的な認可が行われた疑惑もある。

(大)福岡教育大学日本会議の影

INFORMATION
学 長:櫻井 孝俊
所在地:福岡県宗像市赤間文教町1-1
設 立:1949年5月
資本金:257億2,516万円
経常収益:(18/3)52億4,039万円

 加計学園森友学園の両疑惑は、安倍首相の「お友達」であることが行政現場に強く影響を与えたことが背景にあるとみられている。さらに森友学園の国有地売却をめぐっては、売却交渉を記録した決裁文書にあったウルトラ右翼集団「日本会議」の名前が消されていたこともわかっている。
 日本会議は「悲願」とする憲法改正の「地ならし」を目的に、教育現場への影響力を重視しているといわれる。いま、そうした教育現場への介入を実証するような動きが、福岡教育大学(福岡県宗像市)で起きている。

 福岡教育大学(以下、福教大)は、教員養成大学として長い歴史をもち、とくに九州圏内の教育現場に多くの教員を送り出してきた。「福教大閥」は教育行政にも影響力をおよぼしており、福教大を押さえることは教育現場を取り仕切る体制を敷くための重要な布石となる。
 その福教大は、16年4月に就任した櫻井孝俊学長の選出をめぐって、揉めに揉めた。櫻井学長の前任の寺尾愼一学長時代から続く「改革」路線に対して、一部教員から反発の声が挙がったのだ。
 教育研究費を削減し、カリキュラムでは教員免許を取得しない「ゼロ免課程」を廃止するなど、学生の意向を無視した「改革」を強行。運営面では寺尾前学長を批判した教員を冷遇し、「恐怖政治的」(福教大職員)を敷いて学内自治を弾圧した。
 学長選前の3月には寺尾前学長の解任要望書が出され、教員の半数にあたる84人が署名したが、寺尾前学長は副学長として残り、「寺尾派」とされる櫻井学長とともに改革を続ける方針を表明している。
 そして今年4月、福教大は大学運営の最高機関である経営協議会メンバーを発表した。そして、そこに記されたメンバーに、ある教員は「ここまで露骨に進めるのか……」と息を飲んだ。

福岡教育大学広報誌『JOYAMA通信』(2016年11月号)より。向かって左から、
黒見義正・福岡ECO動物海洋生物学校長、尾崎春樹・(学)目白学園理事長、櫻井孝俊学長、
後藤靖子・JR九州常務取締役、学外委員の城戸秀明・福岡県教育委員会教育長

 

教育勅語」を重視、志明館小中の発起人も

 まずは問題の委員について、どんな人物なのかを概観してみよう。

嶋倉 剛=理事・副学長(総務・財務担当)
朝鮮半島の植民地統治は事実に反する」発言~加計学園―安倍首相人脈

 08年5月、当時の江島潔下関市長は、嶋倉氏を教育長として招聘。同年、補助金増額の陳情に訪れた山口朝鮮学園の理事長と保護者に対して「日本が朝鮮半島を植民地統治したことは、歴史的事実に反する」と発言した。この発言は全国ニュースで伝えられて問題になったものの、江島市長は「謝罪や撤回を指示する考えはない」とかばい続けた。
 その江島氏は、加計学園さらに安倍首相との密接な関係も取りざたされている。江島氏は1995年から4期14年、2009年まで下関市長を務め、13年に参議院議員に転出。市長を辞めて以降数年間、客員教授を務めていたのが倉敷芸術科学大学倉敷市)だった。倉敷芸術学園の設置者は(学)加計学園で、江島氏と安倍首相は父親の代からのつながりがあり、地元政界の関係者は「安倍首相が江島氏を加計学園に紹介した」と噂している。

尾崎春樹=(学外委員)目白学園理事長
週刊文春天下り官僚特集で、名指しで批判された人物

 17年に問題となった文科省官僚の天下り問題のなかで、『週刊文春』に名指しで批判記事が出た元文部官僚。目白学園は、文科省から多くの天下りを受け入れた大学としても知られる。

黒見義正=(学外委員)滋慶学園 福岡ECO動物海洋生物学校長
文科省天下りシステムのドンが顧問を務める学園、福岡校校長

 校長を務める福岡ECO動物海洋生物学校の母体である滋慶学園は、文科省天下り事件の脱法システムを仲介した文科省人事課OB・嶋貫和夫氏が、退職後に特別顧問を務めた。(学)滋慶学園は大学新設を目指し、嶋貫氏を学長として文科省に設置申請を行ったが頓挫し、現在は大学設置自体を見送っている。

谷井博美=(学外委員)前宗像市長 ※4月の宗像市長選後、伊豆美沙子宗像市長に交替
「九州の森友学園」志明館設立をけん引~支援者は日本会議福岡会長

 谷井氏は前宗像市長で、櫻井現学長を選考した学長選考委員の1人。谷井氏の支援者には松尾新吾氏(日本会議福岡会長、元九州電力会長)が名を連ねる。谷井氏は、教育勅語に基づいた教育を目指す小中一貫校「志明館」の新設計画に対して、宗像市河東の広大な土地を無償提供した。森友学園問題が国会で注目を浴びた時期に、「建設予定地下に巨大な岩盤が見つかった」とされて、学校建設は振り出しに戻っている。

 また、谷井氏支援者の1人だった伊豆美沙子元県議会議員は、早くから谷井氏に後継指名された人物。今年4月22日投開票の宗像市長選に立候補し、次点に大差をつけて当選した。伊豆氏は日本会議地方議員連盟の一員であり、実家は宗像のつくり酒屋「伊豆本店」。神社本庁のなかでも「位が高い」とされる宮地嶽神社に御神酒を納めている。

▲谷井博美 前宗像市
 
▲伊豆美沙子 宗像市
 (宗像市HPより)

久留百合子=(学外委員)(株)ビスネット代表取締役
女性の社会進出を応援……しかし、共同代表は日本会議福岡会長

▲久留百合子氏
 (福岡県子育て応援宣言HPより)

 JR九州常務の後藤靖子氏が18年3月末に経営協議会メンバーを辞め、その後任となったのが久留百合子氏。アンケート調査、モニター調査などを行う会社「ビスネット」の代表取締役だが、久留氏の活動の1つに「女性の大活躍推進福岡会議」がある。久留氏はこの組織の共同代表を務めるが、共同代表のもう1人は前出の「日本会議福岡」会長、松尾新吾氏だ。

八尋太郎=(学外委員)博多学園理事長
右翼養成学校?「志明館」の学校運営~加計学園の影

▲八尋太郎氏(志明館HPより)

 「九州の森友学園」と言われ、宗像市での開校を目指していた志明館小中学校。同校の学校運営を行う予定の(学)「博多学園」の理事長が八尋氏だ。さらに博多学園は、16年に「吉備国際大学」と教育提携協定を結んでいるが、同大学を設置する「(学) 順正学園」の理事長・総長の加計美也子は、加計孝太郎氏の姉。順正学園の実態が加計学園グループであることは明らかで、博多学園は加計学園と密接なつながりをもつ。
 福教大のある教員は、「博多学園は小中学校をもっていません。さらに、教育大学の附属小中学校について再編・統廃合の動きもあるため、このまま博多学園の影響力が増せば、福教大附属小中学校が博多学園に譲渡されるという悪夢のようなことも想定されます」と危機感を隠さない。

日本会議がねらう教育現場の主導権

 日本会議文科省天下り関係者が経営の主導権を握る大学―福教大が置かれている状況を端的にいえば、そういうことになる。日本会議の着目点はたしかに的を射ているのだろう。教育は国の根幹であり、「教育は国家100年の計」の言葉通り、とくに多感な小中学生時代にどのような教育を受けるかは、数十年後の社会の在り方を方向付ける。将来の憲法改正を目指すのであれば、影響を与えるべきはいまの子どもたちだと考えるのは、極めて合理的ともいえる。
 そして、多感な時期にどのような教師と出会うかということも、子どもたちのその後の人生に大きな影響をおよぼすことはいうまでもない。恐怖政治が支配する大学で監視の目に怯える教員たちが、子どもたちの可能性を十分に引き出してあげられる教師を育成することができるのか。
 教員養成現場が政治的、思想的なかけひきの主戦場にされ始めているとすれば、日本はいま大きな転換期にあるのかもしれない。

【特別取材班】