茅ちゃん日記

世の中のこと、思うことをつづります

【緊急事態条項の論点】                  居住の自由や財産権制約も           政府権限強化に問題点


 憲法改正をめぐり自民党が最優先に議論する方針の緊急事態条項は、大規模な自然災害や外国からの武力攻撃に対処するため、政府の権限を平時より強化する規定だ。東日本大震災を機に必要だとの議論が高まった。自民党改憲草案は国会議員の任期延長や、首相の衆院解散権の制限などを明記した。一方、居住の自由や財産権など基本的人権の制約が前提となり、問題点も指摘される。

 ▽震災の教訓

 自民党は2012年にまとめた憲法改正草案で、有事や大地震の発生時などに、首相が閣議に諮った上で緊急事態を宣言できるとした。宣言後、政府は法律と同じ効果を持つ政令の制定が可能で、首相は緊急の財政支出も行える。宣言には、事前か事後の国会承認を要件とした。
 自民党国会議員の任期を延長できる規定の新設が「急務だ」とする。東日本大震災被災地では、発生直後に予定された統一地方選が特例法で延期された。衆参両院議員の任期は憲法で明記されており、法律で例外を設けることができない。谷垣禎一幹事長は「震災まで気が付かなかった」として、教訓にすべきだとの認識を示す。

 同党の改憲草案は、緊急事態宣言が有効な期間中は衆院が解散されず、国会議員の任期や選挙期日に関し特例を設定できるとした。維新の党は早急な検討を要求。公明党北側一雄副代表も、任期延長規定がない現行憲法について「明らかな不備がある」と強調する。

 民主党も任期延長に限れば「議論の余地がある」との立場だ。衆院憲法審査会では、首相の解散権を制限する必要性にも触れた。

 ▽権限強化に慎重

 意見が割れそうなのは、基本的人権の制限だ。自民党改憲草案は緊急事態が宣言された場合、「何人も国その他公の機関の指示に従わなければならない」と明記した。

 緊急事態条項を議論した13年5月の衆院憲法審査会では、制限の例として大災害時の倒壊家屋の撤去や立ち退き要請、食料や燃料の統制を挙げた。自民党は「国民の命という大きな人権を守るため、他の人権が制限されることもあり得る」と理解を求める。

 民主党は05年の憲法提言に「国家緊急権を憲法上に明示」するとうたったが、主眼は緊急事態でも基本的人権の制限に歯止めをかける点にある。13年の憲法審査会では、自民党の見解に対し「権利の制限だけが独り歩きしかねない」として、権限乱用による人権侵害に懸念を表明した。

 公明党も人権の制限について、仮に必要であっても目的は国民の生命を守ることに限定し、国益が目的ではないと明確化するよう求めている。党幹部は「首相の権限を強化しすぎるのは危険だ。慎重に議論する必要がある」と指摘する。

 (共同通信

2015/05/24 11:25