茅ちゃん日記

世の中のこと、思うことをつづります

「TABIBITO自然に 素朴に 明日をみつめて」より転載

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日本のメディアに関しての記事

日刊ゲンダイ」13日付の「注目の人直撃インタビュー」

「日本の大新聞は権力者の側に立って国民を見下している」と題したニューヨークタイムズ東京支局長のマーティン・ファクラー氏へのインタビューだ。

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「国の根幹が変わるのに新聞が反論を載せない異常」「政治利用されたイスラム国の人質事件」「ごく一部の人が管理し動かしている日米同盟」「こんな民主主義国家見たことがない」との中見出しで、日本の新聞の深刻な現状を憂い、日本の新聞が書こうとしないことをズバリ述べている。

 

「相変わらず安倍政権の支持率は高いが、不思議なことだ。…(略)…政治とカネの醜聞が噴出し、大臣がまた辞任した。そんな中で、安倍政権平和憲法をかなぐり捨てる法整備を進めているのに、世論は怒るわけでもない。その理由を尋ねると、来日して12年になるニューヨーク・タイムズ東京支局長のマーティン・ファクラー氏からは明快な答えが返ってきた。 『報じない大メディアが悪いのです』――。」
自衛隊が世界に出ていき戦争協力する法案が提出されようとし、国の形が変わってしまおうといのに日本人が関心も示さないことに対して「こうなっているのは2つの大きな要因がある」として「ひとつは自民党一強、野党不在の政治状況。もうひとつはメディアが安倍政権を怖がって批判を控えていること」だと指摘し、次のように述べる。

 

「日本はいま、……憲法に基づいた平和主義を守るのではなく、米国や英国の仲間になろうとしている。果たして、それでいいのか。大きな岐路、重要な局面に立っているのに、そうした議論が何もないじゃない」として「恐らく多くの国民は、戦後以来の大きな変化が起こっていることすら知らないんじゃないですか。私は何も新聞に反安倍のキャンペーンをやれと言っているわけではないんです。安倍政権はこういうことをやろうとしているけれども、そこにはこういう問題点や危険性がある。こういう別の意見もある。せめてさまざまな立場の見方を紹介して、幅広い議論を喚起することが必要なんじゃないですか。」と述べる。
だが、それすら大新聞はやろうとせず、安全保障の問題をタブー視しているのはなぜか。

「…9・11の直後、米国では国を守るためには団結しなければダメだという危機感がメディアの批判精神を鈍らせました。これは大きな失敗でした。あの時こそ、メディアは冷静になって、きちんとブッシュ政権に問うべきだったんです。本当にイラク大量破壊兵器はあるのか。本当に、この戦争をしなければいけないのか。しかし、それをやらなかった。それと同じ失敗を日本のメディアは犯そうとしていますね。」とする。

イスラム国の人質事件ではニューヨーク・タイムズ紙に「イスラム国は平和主義から逸脱する日本を後押しするか」というタイトルの風刺画が載った。そこには車夫(=日本人)の鼻先にイスラム国の旗をぶら下げ、『憲法改正』の車を走らせる安倍首相が描かれ、キャプションには「安倍晋三“大統領”は復讐を呼びかけた」とある。

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「権力を見ない新聞を国民が信じますか?」として、米国人は一般的に安倍首相のことを、そういう目で見ているという。

そして、日本の大メディアが風刺画どころか、安倍首相の「イスラム国と戦う国への2億ドル支援」演説の是非についてもほとんど論じていないことについて「私は中東で調査をしたわけではありませんが、東京から見ている限り、安倍政権はあらゆるルートを駆使したわけではないでしょう。最初からあきらめていたように見えます。身代金の支払いにしても早い段階から拒否しているし、この事件を政治的に利用し、テロに屈しないと宣言して米英の一員であることを国内外にアピールするのが狙いだったように感じました。」と述べ、「私は列強の仲間入りをしたいという安倍首相が悪いとは言いません。彼は素直に自分のやりたいことをやっている。それは就任前の言動から容易に推測できたことです。問題はそれに疑問も挟まず、従って何の質問もせず、説明も求めないメディアの方です。だから、安倍首相が積極的平和主義を唱えれば、多くの国民が何の疑問も持たずに“そんなもんか”と思ってしまう。ここが危険なところです」と警鐘を鳴らす。
ファクラー氏と孫崎享氏の対談本、「崖っぷち国家 日本の決断」(日本文芸社)の中に、米国と一緒になって戦うことが日本を守ることになると主張する政治家、官僚、学者、評論家たちは、米国がやっていることが正義であるという大前提に立っているが、そういう人々の多くは、アーミテージ元国務副長官に代表されるジャパンハンドラーと呼ばれる人としか付き合っていないと書いてることについて、ファクラー氏は「ジャパンハンドラーの人々は非常に保守的で、オバマ政権にも入っていないし、決して米国の意見を代表しているわけではありません。それなのに、自民党の政治家や外務省の官僚はジャパンハンドラ―に頼ってしまう」のだという。
対談本でファクラー氏が「ジャパンハンドラーは『既得権益集団』で、コンサルティンググループなどをつくり、強欲な商売をしている」と言っていることについても「鳩山政権の時に脱官僚を唱えた瞬間、日米関係がぶっ壊れたでしょ? あんなにすぐ壊れるものかと驚きました。このことは日米のパイプがいかに細いかの裏返しです。一部の自民党の政治家や官僚とジャパンハンドラーとの付き合いしかないのです。日米関係に関わっている人は非常に少数で、そういう人が同盟関係を管理している。だから、普天間基地の移転問題にしても辺野古しかないという結論になってしまう。もっと幅広い人脈と付き合っていれば、さまざまな意見、選択肢が出てくるはずです。」とする。

 

集団的自衛権が日米同盟では当たり前ということになってしまうのではないかということについては、「確かに戦後70年間、米国と一緒にやってきて、ある意味、安全だった過去の実績はあります。でも、今後もそれでいいのか。平和憲法を捨てず、平和主義を貫く選択肢もあるし、鳩山政権や小沢一郎氏が唱えたようなアジア重視の道もある。どちらがいいかは国民が考えた上で決めるべきです。」と述べる。
ところが、日本人には、それを判断する情報すら与えられていない、新聞が選択肢すら報じないということについて「日本のエリートの上の方で、物事が決まっている。大きな新聞はそちらの方を見て記事を書いている。そんな印象ですね。新聞社は読者の側に立って、権力を見ていない。権力者の側に立って、国民を見下ろしている。そんなふうに感じます。こんな新聞を国民は信じますか?」と指摘する。

 

米国追随路線をこのままエスカレートさせたら、この国はどうなっていくと思うかの問いに対して「イスラム国のような事件がまた起こりますよ。米英豪仏などと同じ一員になれば、彼らの敵が日本の敵にもなる。日本人はそこまでの覚悟をしているのでしょうか。いずれにしても、民主主義国家でこれほど異常な一党支配の国は私の知る限り、見たことがない。戦前と似ていると言う人がいますが、野党不在で政権と違う意見を許さないという雰囲気においては、似ているかもしれません。健全な民主主義に不可欠なのは議論なのに、それを忘れているとしか思えません」と述べた。
マーティン・ファクラー 1966年生まれ。ダートマス大卒業後、イリノイ大、カリフォルニアバークレー校で修士ブルームバーグ東京支局、AP通信東京支局、ウォールストリート・ジャーナル東京支局などを経て、ニューヨーク・タイムズ東京支局長。近著に「崖っぷち国家 日本の決断」(日本文芸社)。

 

 

安倍首相の「わが軍」発言も、自民党女性議員の「八紘一宇」発言も、情けないことに、ごく一部のメディアしか問題視していないし、とりあげようともしない。

 

                   「毎日」27日付夕刊

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さらに、沖縄辺野古新基地建設をめぐり、翁長県知事が23日に沖縄防衛局の作業停止指示を出したことに対して、林正芳農水相が昨日「作業停止指示を一時的に無効とする意向を固めた」というが、国が、地方で選ばれた県知事の指示を制限することなど大問題だと思うが、それも今朝の新聞は、小さい記事が、とりあげていない。

 

安倍政権の言っていること、やっていることが「ここまで来たか」と思うとともに、日本のメディア界の思考停止状態も「ここまで来たか」と思わざるを得ない。

マーティン・ファクラー氏が言うような「権力者の側に立って、国民を見下ろしている」ような新聞社やテレビ局であるならば、メディアとしては、死んだも同然である。

読者や視聴者あっての新聞・テレビであるはずなのに事態は深刻であり、たいへん危険な水域に入ってきたといえよう。